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神威杏次 official blog

【俳優・脚本・演出家 カムイキョウジのモノローグ】主に、好きな映画の話に絡めて、神威が意味不明なことを書いているブログ。◆映画の話はネタバレご注意◆

選択できる苦しさ「待つ女」

「待つ女」と云うフランス映画を観た。

 

7年の刑で服役中の旦那を、塀の外で待つ女の話。

面会で顔をあわせ、お互いの手や顔に触れる事はできるのだが、それも看守の監視下。

お互いのカラダを求め合うことはもちろん許されない。

 

主人公の女性は、満たされない欲望を満たすために、他の男性と関係を持つ、なんて流れは容易に想像がつく。ただ、その男性が旦那の担当の看守だった…と云うヒネリが加わった事で、物語は意外な方向に展開を始める。

 

かといって、脅迫だ報復だ、なんて方向に進むわけではなく、三人とも決して悪人ではない、純粋な人間として描かれ、以降は「イビツな三角関係」の物語と化していく。

いかにも単館系のフランス映画、と云う趣き。

 

傑作!と声高に推奨するほどの出来ではないけど、個人的に好みの映画だった。

牢獄の面会室を拠点として、塀の中にいる男と外にいる女が描かれるわけですが、面白いのは、むしろ外にいる、自由な立場にあるはずの女のほうがより苦しむ姿が描かれている点。

 

さすがドキュメンタリー出身の監督だけある。

塀の中で、あらゆる事を遮断・禁止された男も、もちろん苦しいし、映画の中で自殺未遂も起こす。しかし、それは選択の余地がない分、考えれば考えるほど、開きなおるしかない、彼女を信じるしかない、と云う答えに至る。

 

それ以外どうしようもないのだから、ある意味、楽なのである。

選択権を与えられるほど、自らが選んだ結果に苦しめられる。

自由は、人間を精神的に追い込む怖さを秘めている。

 

「自由が欲しい。」その意味もわからないまま、19歳で実家を飛び出して、人生の大半を、俳優やら、自分の会社経営やら、誰かに直接的に雇用されることにほとんど縁なく生きてきた僕は、一般の人よりは、自由という言葉の意味を、ほんの少しだけ、多く知ってると思います。

 

自由って、辛いし、怖い。

それが嫌というほどわかった今でさえ、それでもやはり自由が欲しい、と思うし、

これからも、ひたすら自由を求めて生きていくんだと思います。

 

映画の中盤、そんな「自由」を求めて旅に出る彼女。一通りの踏み絵を踏んだ彼女が、最後に選んだ道は、街に戻って旦那の帰りを待つ事。もし、違う結末なら、彼女が違う道を選んだら、僕はこの映画を好きとは感じなかったと思います。

 

自由…、絆…、宿命…、

いくつかのキーワードが、頭の中でグルグル廻った。