神威杏次 official blog

【俳優・脚本・演出家 カムイキョウジのモノローグ】主に、好きな映画の話に絡めて、神威が意味不明なことを書いているブログ。◆映画の話はネタバレご注意◆

本当に届く言葉とは…

真実ってひとつではないと、常々思っている。

人それぞれ、ひとりずつに違った真実がある

 

カムイ

 「イリュージョン」(原題 The Woman in the 5th)

邦題に違和感あり。映画とはイメージ違い。原題直訳「5番目の女」のほうが近い。

 

主演は、負のオーラをこれでもかと身に纏ったイーサン・ホーク。イケメン。娘に会いたいために、別れた妻の家を訪れ警察を呼ばれてしまうイーサン。安宿に泊まるが荷物を盗まれ宿代を払えず深夜警備のバイトをはじめるイーサン。作家が集まるパーティに招待されたと思いきや、しっかり飲食代をとられ、自作を読んでいない客の適当な会話につきあうことになるイーサン。もはや完全に壊れているイーサンさん。

 

ここで描かれるパリに、従来の華やかなイメージはない。退廃した怪しい街として描かれるヨーロッパの街並みは、そっち方面が好きな人には、雰囲気観賞用だけでもアリなのではないか。

 

中盤で恋仲になるポーランド娘の、若さだけが取り柄であろう微妙な可愛さが現実的で良い。

 

そんな落ち目全開の前半から、パーティで出会った熟女と関係を持ったが、実はその女は、数年前に既に自殺していた。そのあたりから、どこまでが現実で、どこまでが幻想かわからない不思議な方向に進む。

 

夢オチ的に答えがないまま終わる結末。「なにこれ?」「スッキリしない」…が、一般的な感想になるのだろう。

 

説明がないと納得しない派にはお奨めできないが、メッセージとしては割とハッキリしている。映画にカタルシスではなくテーマを求める派には充分に訴求する。

 

負のオーラをまとい未練を断ち切れない

主人公に同類の魂が寄ってきてしまう。

負を断ち切るには前を向くしかない。

それができない主人公は…

幻想の世界の奥深くに取り込まれていく。

一番わかりやすいテーマはそういうことになる。

 

個人的にはかなり好きなテイスト。

面白かった!とは絶対なりませんが、

カムイに騙されて観てやろうって人はぜひ。

 

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この映画の最後のエピソードが心に響いた。

 

主人公は、映画の前半からずっと娘宛ての長い手紙を書いている。いつか、娘にわかってもらいたい一心で、想いのすべてを長々と…。

 

しかし、一度はゴミ箱に捨てた手紙の最後の一枚を拾い上げ封筒に入れたのは、文末に書いた「愛している」の一言だけ。そこだけを破って封に入れ、投函する。

 

わかりあえなくて当たり前。

それぞれに違う真実を抱いて生きる者たちがわかりあうには、必要最低限の言葉しか通用しない。どんな長文で想いを綴っても本当に届くのは単刀直入な一言だけだ。

 

理屈じゃない「愛してる」という想いだけ。