神威杏次 official blog

【俳優・脚本・演出家 カムイキョウジのモノローグ】主に、好きな映画の話に絡めて、神威が意味不明なことを書いているブログ。◆映画の話はネタバレご注意◆

60歳の童貞おやじ 「ニンフォマニアック」

「平気で嘘をつく人たち~虚偽と邪悪の心理学~」という本がある。

 

「邪悪とは、犯罪者でもない普通の人の中に日常的に存在する」が、

さまざまな隠れミノに覆われていて、一見、邪悪だとは気づかない。

その手法は…「自己正当化」「他者への攻撃」「道徳を振りかざす」「傲慢」

「偽善」「自己愛」「支配欲」…だいたいそんなキーワード。

 

この本のことは過去に何度か書いてますが

どうしてまたこの話題を?というと、

ラース・フォン・トリアーの新作映画を観たから。

 

この監督、上記の本のようなことをず~っと考えてる人だと思います。

実際「ドッグヴィル」など、それが原作?と思うくらいの内容。

近年うつ病に苦しんたこともあったとか。

その無闇に哲学的なところが、僕は大好きなのです。

 

この監督の映画を友達に薦めて喜ばれた試しがない。

むしろ怒られる。彼女なら殴られる。

観客を不快にさせる天才。

 

でも、今回の新作なら、ちょっとお薦めできる。

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 ニンフォマニアック」(vol.1 & vol.2)

 

ラース・フォン・トリアーから不快感が薄れた。

 

といっても、ラースが観客に擦り寄ったとは思わない。

「色情狂」という題材に救われたのだと思う。

 

そもそも、なぜ不快に感じるかと言うと

 「行動原理を理解できないから」。

 ひどい、残酷、だから不快なのではない。

 

電車の中の会話は気にならないのに、

他人の携帯での会話がムカつくのは、

「なに話してるかわからないから」

だからイライラするって説に、ちょっと似てる。

 

理解できない…感情移入むり!…なんだこれ…

面白くない…不快…という進行だとしたら

その点、この映画の題材は「セックス」であり誰にも理解しやすい。

だから不快感が薄れた。

 

主人公・ジョー(女)が、夫との性生活では不感症になりSMの刺激に活路を見出す。

やがて、夫も子供も捨ててSM調教師の元に走る。

 

これなど、考えたらひどい話だけど、身の回りに良くある浮気・不倫と変わらない。

 

ひどい行動でも、実例を見慣れているから理解できる。

そして、その先に間違いなく苦しみが待っているのも

日常で見聞きして知っているから感情移入もできる。

 

ただメチャクチャな映画ではなく、強すぎる性欲が、

いずれ、暴力・権威・支配欲へと変貌していくシナリオは、

まじめに作っているなとわかるし説得力がある。

 

それにしても僕のツボに入ったのが、

「愛は、嫉妬混じりの性欲に過ぎない」と

言い切る淫乱女の身の上話を聞くのが

…60歳くらいの童貞おやじ、という設定。

 

このコミカルさがすべてを中和させるクッションになっている。

 

よく思いついたな~これ。美味しすぎる。

 

残念なのは、この設定が判明するのがvol2に入ってから。

最初から言ってくれたら、もっとワクワクしたのに。

 

ラストシーンで爆笑した。

 

最後に絶対に、この童貞オヤジになにか起きる!とは身構えていたけども、

そう来たか…と、にんまりの結末に爽快感(僕には)。

 

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でも監督のファンじゃない人がみたら、

やっぱり不快な映画かも知れないので強くお薦めはできません。