読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

神威杏次 official blog

【俳優・脚本・演出家 カムイキョウジのモノローグ】主に、好きな映画の話に絡めて、神威が意味不明なことを書いているブログ。◆映画の話はネタバレご注意◆

リメイク版「オールドボーイ」

ハリウッド映画で良く耳にする…ラストシーンを複数作って、試写のアンケートでどのヴァージョンを採用するかを決める…なんて方法。

 

そんなことしてるから面白くなくなる。

 

10人中8人が「YES」という結論ほど面白くないものはない。

 

<広告>

 

==============

 

パク・チャヌク監督&主演チェ・ミンシクの名作「オールドボーイ」(2003 韓国)。過去に何度もこのブログで絶賛した映画です。

そのハリウッドリメイク版「オールドボーイ」(2013)

以下、ネタバレ満開です。

================

 正直、自分的には韓国版が最高すぎて、リメイクには期待してなかったんですが、思ったよりは良かった。

基本は前作の設定を引き継いでいる部分が多く、なにより「近親相姦の恨みは近親相姦で。」という最もショッキングな設定を変えてなかったのはホッとした。その設定があるからこそ、この映画が凄い映画だと言う所以だから。(ちなみに原作の漫画にはその設定はない。)

 韓国版の、エグい舌切りシーンから始まる救いようのないラストが苦手という人には、こちらのリメイク版のラストのほうが、素直に、この脚本の面白さを理解してもらえるかも知れません。

  ただ、決して良くはないです。悲哀が足りない、切なさが足りない。趣がない。

 前作のところどころにあった突っ込みどころに、説得力を持たせて解決しようとしたのだろう、リメイクで追加した新設定が悪くはない。「監禁から解放された後に出会い、愛し合った女が、実は成長した自分の娘だった。」という根幹の部分には「偽のテレビ番組を20年間見せ続けて騙した」という、これ以上ない設定が用意されていて、そこは「ほ~!」と感心してしまったのですが、改悪部分もいくつかあり、犯人の近親相姦が「父親と娘」はまずい。あそこは、犯人本人と姉との「兄弟の禁断の愛」だから趣がある。

 そして、主人公を「おじさん」と呼ぶカン・へジョンのロリータっぽさが良かったのに、リメイクのヒロインは、普通にキレイなオネェさんになっていて、なんだか禁断っぽさが消えているせいか、物語の中でとても大きな意味を持つはずの、主人公&ヒロインが結ばれるシーンが、単なるハリウッド映画のベッドシーンにしか見えない。

 

だめです、そこは「禁断」じゃなきゃ!

 

そもそも、出会ってから結ばれるまでの恋愛描写がほとんどないから、ただ、成行きでやっちゃいました、大人同士だからね~…にしか見えない。

 

う~ん、主要スタッフの中に韓国版に強い思い入れを持ってる人間はいなかったのか。

 

そのあたり、この映画に限らず、韓国の映画は、絵的にも、俳優の演技も、哀しさの表現が最高に巧い。

 

冒頭の傘のシーンや、おもちゃの羽根など、ちょこちょこ真似してはいるんだけど、やはり雰囲気が出ない。ハリウッドの感覚には、なにか悲しいのか、なにが美しいのか、という感性の部分で、僕らアジア人とは決定的に違っている部分がある。ただストーリーを成立させることだけに奔走したイメージ。

 

ラストシーンも設定は悪くはないんだけど、面白くない。もっと悲壮感があるべきかと。

韓国版ほど悲惨じゃなくていいから、もうちょっとなんとか…。

 

それでもそこそこ面白いのだから、やはりオールドボーイは名作だったと再確認。

 

だいたいどんな物語か知りたい人はリメイク版を。

世界観にどっぷり浸りたい人は、韓国版をどぞ。

 

===================

 

最も残念だったこと。

韓国版にあった名セリフがことごとく使われていなかったこと。

 

「笑う時は世界と一緒、泣く時はお前ひとり。」

 

「未来は心配すまい。想像すまい。監禁されたことがありがたく思える。昔の俺だったらミドは好きになっただろうか。」

 

「砂塵も鉄の塊も、水に沈むのは同じ。」

 

…まだまだあった気がする。

 

名セリフなくして名画にならず。