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神威杏次 official blog

【俳優・脚本・演出家 カムイキョウジのモノローグ】主に、好きな映画の話に絡めて、神威が意味不明なことを書いているブログ。◆映画の話はネタバレご注意◆

真実か挑戦か「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」

そして、君は得られたのか?

 この人生で求めたものを

 私は手に入れたよ

 君は何が欲しかった?

 愛された者と呼ばれること

 愛されたと感じること

 この地上に生きて

 

レイモンド・カーヴァー

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イニャリトゥ監督は、間違いなく嗜好的にダークサイドの人で、暗い重い作品が好きな僕からみたら「こっち側の人」。

今回は趣向を変えてコメディタッチに作ってはいるが、本来のこの監督を知るには「21グラム」「バベル」「アモーレス・ペロス」を観ればよい。

 

劇中で出てくる実名も、ウディ・ハレルソンだライアン・ゴズリングだと、好みの俳優ばかり。

 

そんなこっち側の人がオスカー作品賞と聞いて、よほど万人受けする映画を作ったのかと思ったら、なんのなんの、いつものイニャリトゥさんでした。

 

きっと、この映画も、わからない人には「さっぱりわからない」んだろうし、わかる人には「嫌というほどわかる」…面白いか面白くないかでいえば賛否両論になるのでしょう。

 

それでもレビューで絶賛が多いのは「アカデミー賞をとったんだから良い映画に違いない。」と云う認知的不協和によるものと見た。もし賞をとっていなければ「面白くない」という意見が増えると想像できる。

 

そんな映画がオスカーを取った意義って、今後、大きな意味を持ってくる予感がする。映画界が変わるくらいの。

 

カメラワークには一様に驚嘆するに違いないけど、僕は、鏡の使い方のほうが気になった。

 

鏡を使うカットは昔から当たり前にあるけど、完全に部屋全体が鏡に写っているシーンで、カメラやスタッフが一切写っていないことに驚き。…といっても、今はCGでなんでもできるのか…後から消したんだな、と思うと感動も薄れる。

 

撮影現場で、スタッフが必死に写り込まないように廻り込む、あのアナログ感や「サングラスのミラーにカメラが写り込んだ。惜しい!もう一回!」なんてこともなくなっていくのか?と思うと、ちょっと寂しい。

 

全編ワンカットに見せる演出は、妄想、夢にありがちな「不条理な展開」「物事の非連続性」を現すには見事な効果で「あー、夢ってこんな感じで展開するよね」と納得できる。

 

あの映像と音響だけでも、ぜひ映画館で観るべき作品。

 

映画と演劇

ヒーロー物と一般物、

デジタル社会とアナログ社会

男と女

過去と現在

…さまざまなモノを対比させながら、それぞれの立場が持つプライドとコンプレックスを皮肉たっぷりに描いていて、虚構か現実か、真実か挑戦か、の選択を叩きつけてくる。

 

このあたりは、まるで自分に言われているようで、痛いやら苦笑やら。

 

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人間の幸せは、誰かに愛されること。誰かを愛すること。これに尽きる。

 

富でも名声でも美でもオシャレでもない。

もちろん、愛されるためにはそれらが力になるという現実的なご都合はあるけども。

 

最終的には、この映画のテーマになった冒頭の詩に尽きる。

 

もし、この確信が間違っているなら、

もはやこの世に生きてる価値などない。