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神威杏次 official blog

【俳優・脚本・演出家 カムイキョウジのモノローグ】主に、好きな映画の話に絡めて、神威が意味不明なことを書いているブログ。◆映画の話はネタバレご注意◆

いま生きている理由

単細胞生物は、何度も細胞分裂することで生命をつなぐ。かたや多細胞生物は、元気なうちに子孫を残すことで、種としての生命をつなぐ。繁殖能力の衰えた者は老化し、やがて死を迎える。

 

個体…ひとりひとりは不老不死ではないけども、子孫にバトンタッチすることで種の命をつなぐ…のが、人間を含む動物に与えられた「不死」の方法。

 

「人間はなんのために生まれてきたのか」という命題があるけど、答えは簡単。

 

「種の保存と繁栄」のためだ。

 

元来は…との前置きはあったほうがいいけども。

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「月に囚われた男」(原題:MOON 2009年)

 

当時、恵比寿ガーデンシネマで単館上映していたのを観に行った。これ、かなり面白い映画です。おすすめ。

 

[あらすじ]

近未来、地球は、エネルギーの70%を月の裏側で採掘される「ヘリウム3」に依存していた。主人公・サムは、三年間の任期で月にある基地に派遣されエネルギー採掘の仕事に従事している。

人工知能を備えたロボット、ガーティとの二人(?)暮らし。通信機器の故障で地球とのリアルタイムの会話はできない。家族との会話は、録画されたテープを観るだけ。それでも、地球に残した妻と娘から送られるビデオレターを心の支えにしながら、地球に帰る日を心待ちにしていた。

 

任期もあと2週間となったある日、彼は、月面作業中に事故を起こす。気が付くと医務室のベッドの上。なんとか助かったらしい。ただ、なにかがおかしい。ガーティの監視をくぐりぬけ、事故現場を確認にいった彼がみたものは、負傷したまま放置されている…もうひとりの自分だった。

 

※以下ネタバレ

 

サムは、地球にいるサムという実在の男のクローンだった。秘密の部屋には、何体ものサムのクローンが保存されていて、三年間というあらかじめ設定された寿命が来ると「地球に帰る(はずの)カプセル」の中で、そのまま処分される運命。そして、組織は、次のサムを覚醒させて、あらたな三年間が始まる。

 

家族からのビデオレターは、何度も繰り返し使われた録画テープ。サム(のクローンたち)は、同じ三年間を永遠にループしていた。

 

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ひさしぶりに観たら…あらためて響きました。

 

寿命に設定された三年が近づくにつれ、どんどん体力がなくなり、動けなくなっていくサム。

起きたばかりの元気なサムとの対比は、人間の「老い」を現しているのかも知れない…なんてことは、六年前に観た時には感じなかった。

 

やばい、俺が歳くったせいだ。

 

通信機器の故障が嘘だと気づいたサムは、、妨害電波が届かない地域に移動して、月に来て(厳密には目覚めて)から初めて、生で、地球にいる家族に電話をかける。

 

妻はすでに死んでいた。娘は15歳に成長して、父(オリジナルのサム)と暮らしている。たまらず電話を切るサム。

 

自分がみせられていた家族の姿は10年以上前の録画テープで「あの頃の」「自分の」家族はどこにも存在しなかった。

完全なる孤独を確信したサムは、絶望に泣き崩れる。

 

このあたりはやばい。

かける言葉がない。

 

組織の手下であるはずのロボット、ガーティは、サムたちの身を案じ、なにかと協力をする。そして、サムの逃亡を助けながら「私を再起動してくれ」と頼む。自分の中にすべてが記録してある。それを見られたらサムが殺される。ガーティは、自分の記憶を抹消して、次のサムとのプログラムを淡々とこなす道を選択する。

 

法人という人格は、利益のためなら平気で人を殺す。間接的に。しかし、その正体は人間だ。法人格に責任をなすりつけがら、冷徹な決断をくだしているのは人間だ。

 

対比として、ロボットであるはずのガーディが、より人間らしい思考で行動する設定は、企業社会への強烈な皮肉だろう。

 

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種としての人間。

その中の、ちっぽけな個体。

 

「なんのために生まれてきたのか」に対する答え?

本当いうと、そんなもん知ったこっちゃない。

というか、今さら知っても仕方ない。

 

大事なのは「いま生きている理由」に巡り合うこと。