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神威杏次 official blog

【俳優・脚本・演出家 カムイキョウジのモノローグ】主に、好きな映画の話に絡めて、神威が意味不明なことを書いているブログ。◆映画の話はネタバレご注意◆

眉毛のつながった男には気をつけなさい

13歳の少女がベッドで寝ている→物語は、少女・ロザリーンの夢の中のお話。
夢の中で、彼女は中世の村で生きる赤ずきんちゃんになっていた。


「狼の血族」1984
原題:The Company of Wolves

かなりヘンテコな映画。
でも面白いです。

「赤ずきん」をモチーフにしたダーク・ファンタジー。
大抵のおとぎ話が実は残酷…というのは良く言われますが、赤ずきんという物語は、特に、エロ・卑猥な暗喩に満ちています。赤は月経の血の色だとか。

思春期の少女が、性に対する強い興味を抱きながら、大人になっていく。

そう書くと、なんだか綺麗にまとまったお話のように聞こえますが、僕がネタにするくらいなので、決してハートウォーミングではなく、突っ込みどころ満載の、完全なる不条理劇。

お婆ちゃんが話すおとぎ話、ロザリーン自身が誰かに話すおとぎ話、夢の中でみる夢…が、たびたび挿入される多重構造になっていて、夢の中からさらに、どんどん奥の奥に入り込んでいきます。

ストーリーを常識的な思考で追ってはいけません。夢なので。

物語の主舞台となる「森の中」。

これがロケ撮影ではなく、スタジオ内に設営されたセットで、その安っぽい感じが、いかにもファンタジックな雰囲気を出していて非常に好きです。

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僕は、ほぼ終始、笑えました。

・中世の男のメイクがやたら濃くてオシロイ塗ってる。

・人間→狼男への変身シーンが何度か出てくるんですが、ほぼお笑い。

・例の「狼が先回りしてお婆さんを食べてしまっている。」→「狼がベッドで赤ずきんを待ち伏せしている」→「どうしてそんなにお口が大きいの?」「お前を食べるためだよ。ガオー!」なくだりがあるのですが…。

そこで、襲ってくる狼男が最初はでかくて怖いんだけど、最終的に狼に変身したら、普通にかわいいシベリアン・ハスキーになってちょこんと座っている。


もう安心。普通にワンコだし。

・誰かの結婚式で、なぜか女性が全員、狼に変身する。ここでも横一列に並んだワンコたちが舌を出してハァハァいってる。


こんな感じ。ただかわいい。

自分の服を引きちぎり、ロザリンを食べようとする狼男に対して「服を着ている時だけ、人間なのね?」というセリフも、一瞬、時間を置いてからジワジワ来ます。

そういえば、お婆さんは最初から「男は狼なのよ。気をつけなさい。」が口癖で、何度もロザリンに言って聞かせます。
ピンクレディーの3倍くらい言います。

「森の中で裸の男をみたら、悪魔だと思って逃げなさい。」とか

「森の中で、眉毛のつながった男に会ったら気をつけなさい。」とか、

そうそうありそうにない状況まで心配します。

 

と思っていたら、

本当に森の中で眉毛のつながった男に声をかけられます。

おるんかい!


ちなみに、この説教お婆さんは「呪縛」の比喩で、口すっぱく「男は敵だ。」と言い続ける設定も、ラストへの伏線になっています。

突っ込みどころ満載で、観ていて飽きない映画ですが、それでいて、最後はちょっと切ない。

※以下、ラストシーン・ネタバレ

 



完全にワンコと化した狼男をなでながら、ロザリーンが語る「狼少女」のおとぎ話。

「人間と仲よくなりたいと思って村に近づいたメスの狼が、人間に虐待されて倒れた。しかし、ある満月の夜、傷つき倒れていた狼は、なぜか人間の姿に変わっていき、通りがかった紳士に介抱され、嬉し涙を流す…」

その頃、帰らないロザリーンを心配して村から捜索隊がやってくる。ロザリンを助けに飛び込んだ両親がみたものは…二匹の狼。とっさに猟銃を構える父親を母親が制する。片方の狼の首に、ロザリーンがつけていたロザリオ(十字架のネックレス)があることに気づいた母親は、銃口を払い、狼を森に逃がした。

ロザリンは「お婆さんを殺してくれた=呪縛から解放してくれた」狼と同化し、森に向かって走りだす。

親離れ、自由への旅立ち…を現すラストシーン。
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はちゃめちゃなようで、人間のサガをしっかり描いた傑作です。

映画の最後でも、「男は狼なのよ。気をつけなさい」というド直球なナレーションから、エンドロール。

やはりピンクレディで〆。