神威杏次 official blog

【俳優・映画監督・脚本家 カムイキョウジのモノローグ】

感動するイイ話が、全然イイ話じゃないことが多々ある

いわゆる「イイ話」系の記事ってありますよね。

「こんな感動的な話が…」と云う、かなりの確率で作り話であろう、あれ。
バイラルメディアが広告収入を稼ぐためにSNSで拡散させるやつですね。

好きか嫌いかと言えば嫌いですし、いろいろ嘘くさいなぁと感じる。でも、そういうの好きな人がいるなら、僕ごときが文句を言えるものでもないのですが。

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少し前に「さすがに…これはないわ。」と感じた記事がありました。
有名な話らしく、ネットで検索したら今でも出てきましたけど。

↓だいたいのストーリー

・舞台:とある大手企業の社内。就職試験中。
・登場人物:就活生ふたり。清掃員のおばさん。謎のおじさん。
・場所:ビル内のトイレ。
・あらすじ:
『トイレの清掃をしているのは、どこかの会社をリストラされた55歳のおばさん。
そこに入ってきた就活生A君とB君が、おばさんを見て「トイレの掃除なんて絶対無理。人間としてゴミ」などと酷いことを言います。おばさんは我慢して聞こえないフリをしています。後から入ってきた謎のおじさん。おじさんは「トイレの清掃だって立派な仕事なんだぞ。」的な説教をします。そして、不敵に笑い「君たちはこれから面接か?それは楽しみだな。」と、自分の正体を明かします。なんと、謎の説教おじさんは、その会社の社長だったのです。
A君とB君は面接で落とされました。めでたしめでたし。』

この記事に、かなりの人たちが感動して「シェアします!」的なリアクションをしていることに驚いた。驚くと同時に、なんだか暗い気分になった。

この話の構造は「水戸黄門」や「遠山の金さん」と同じ。

権力のある人が身分を詐称して民間に潜り込んで潜入捜査。庶民をいじめる悪人に説教をして、いよいよ身が危なくなると、印籠や入れ墨を見せつけて、自分の社会的立場を誇示。肩書きや権力で身を守り、ひれ伏す庶民を見下ろしながら、高笑いして終わる。

いやらしさ全開やないすか。

結局「権力がすべて」って話かと。
あるいは「権力こそ正義」。

「真面目に生きていれば、困った時はお上が助けてくれる。」という話なんだろけど、正義のはずのお上が、実は一番腹黒かったらどうしようもない。

僕らは子供の頃から、それを「勧善懲悪」と教えられてきた。

勧善懲悪が悪いわけではないけど、そこでの善悪の定義に、やや疑問を感じだす。

侵略のために地球にやってきて、安アパートにいるメトロン星人をみて、なにかを感じる。

だから、いつしか僕らは、
決してキレイごとばかりでは済まない世の中で生きていくために必要な感性を、どこか別の場所で覚えてきたんだ。

それを、今さらこの程度のクオリティの作り話に騙されてどうすると。

こと善悪の判断について、僕らはもう少し個々の感性を信じていい。

SNSで「みんなが良いと言っているもの」「みんなが悪いと言っているもの」に惑わされずに。

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どうせ作り話なら、あるいは…

『おばさんをバカにしたのは謎のおじさんで、そこにいた就活生のA君が思わず年上に向かって説教をする。実はそのおじさんは社長で、反省した社長が「わしは調子に乗っていたよ。うちには君のような人材が必要だ。」などとA君を採用する。』

のほうが、まだ普通にイイ話だ。

もしくはカムイキョウジなら、

『怒った清掃のおばさんがモップに仕込んでいた仕込み刀でA君とB君をぶった切ってあたりは血の海に。しかし、実はA君とB君はホモでクスリの売人でアラサーちゃんのファンだった。そこに入ってきた花屋の配達員が実は殺し屋で、花束に見せかけたマシンガンを乱射して登場人物全員死ぬ。』

みたいなことにきっとなる。


…それもどうかと思うけども…。