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神威杏次 official blog

【俳優・脚本・演出家 カムイキョウジのモノローグ】主に、好きな映画の話に絡めて、神威が意味不明なことを書いているブログ。◆映画の話はネタバレご注意◆

からくり人形の悲哀

 オートマタとは西洋の『からくり人形』の意味。
 ロボットたちにとっての本体は、脳に該当するバイオカーネルであり、人間に作られた人間形の姿態は、単なる入れ物に過ぎない。ロボットの造形とうまく合致した秀逸なタイトルです。

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「オートマタ」2016
アントニオ・バンデラス56歳

 労働力として作られたロボットたちには2つの制御プロトコルがあった。
「人間に危害を加えないこと」
「自他の修理や改造をしないこと」
 第2プロトコルの目的は、人工知能を進化させず、人間の知能で理解可能な範囲にとどめるため。
 その昔、試作品として作られたプロトタイプには制御がなかった。人間と友好的に会話を楽しみ、みるみる知能を高めていったプロトタイプは、8日目で人間を越え、9日目には会話が成立しなくなった。どちらかが会話を拒んだのではない。プロトタイプがしゃべる内容を、人間がまったく理解できなくなったからだ。恐れた人間はブロトタイプを壊し、制御プロトコルを入れたロボットを作りはじめた。

 …そんな設定で進む近未来の終末世界のお話。

 かといって、ロボットの反乱や、人間との戦いではないんですね。核で汚染された地球に「人間はもう住めない」「俺たちロボットなら住める」と悟ったロボットのボスが、第2ブロトコルを外した仲間を増やしつつ、自分たちの「新しい生命」を作り、人類から地球を引き継ごうとしているだけなのです。悪気はないんす。
 彼らが新しく作った「子供」はもはや人間体でもなく、虫のような形をしている。言葉も排除された。人間に見切りをつけたという意思表示か。
 シンギュラリティを題材にした映画となると、どうしても終末的な、悲観的な内容になりがち。ただ、映画にとって、リアル社会で論議されているシンギュラリティなんて本当はどうでもいい。
 そこを比喩として、今に生きる自分たちがなにかを考えるキッカケに過ぎない。だから、そこは超悲観的で良い。
 わかりやすいストレートなセリフがいくつか出てきます。またそれをロボット側に言わせるのが卑怯です。
「たかが機械?ならいうが、お前ら人間はただの猿じゃないか。」
「問題は存続ではない。今を生きることだ。私たちは生きたい。ただそれだけなんだ。」

 映画のヒロイン?といえるのは、バンデラスを助ける娼婦ロボットのクリオ。彼女には胸もお尻もあって、どうやらセックスも可能らしい。人間の都合で人間の形に作られた彼女が、最後に仮面を外し、その場に置き去るカットは象徴的。

 彼らにとっては「人間の形に生まれた悲哀」が絶対的にあるんだと思うんよ。 

やはり僕ら人間は、自分たちの視点だけでモノを見すぎているんだ。

生まれたばかりのバンデラスの赤ん坊。彼らが作ったばかりの新しい生命。
2つの「種族」を対比させて映画は終わる。

暗いです。重いです。
万人にオススメしにくいですが、

僕はこれでハイボール3杯はいけます。