神威杏次 official blog

【俳優・脚本・演出家 カムイキョウジのモノローグ】主に、好きな映画の話に絡めて、神威が意味不明なことを書いているブログ。◆映画の話はネタバレご注意◆

今そこに無い景色

僕らには見えていない風景があるんだ。

【風景1】でかい人(男)
 でかい人はお酒を飲んで上機嫌で駅に向かって歩いていました。道すがら、誰かとバカ話を続けながら歩いています。楽しかったね♪めでたしめでたし。

【風景2】知らないひと(男)
 知らない人はお酒を飲んでいました。なにか嫌なことがあったのか、少しイライラしています。店を出たときに、店の前の道で、でかい人とぶつかり、カバンを道に落としてしまいました。怒った知らない人は「てめぇ!殺すぞ!」と叫びました。でも、でかい人は素知らぬ顔で去っていきました。

【風景3】でかい人の友達(女)
 彼女は、でかい人の少し後ろを歩いていました。と、狭い歩道脇の店から出てきた知らない人が、でかい人と接触してカバンを落としました。「てめぇ!殺すぞ!」と叫んで、いまにも、でかい人を後ろから殴りそうな勢いです。
さて、知らない人が、でかい人に殴りかかったとしたら、私はどんな動きをすればいいのだろう?と、そのわずか10秒くらいの時間が10分に感じるくらい(本人いわく)地獄の時間を過ごしました。

さて、幸せなのは誰でしょう?

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 もし、でかい人が知らない人の怒号にきづいていたら、でかい人はまず間違いなくなにか言い返していたでしょう。場合によっては傷害事件が起こっていたかも知れません。そうでなくとも、みんながもっと嫌な気分になったでしょう。

 知らないことが幸せ、であることは多い。

 普通に暮らしていても、いつどこで誰に恨まれているかわからない?

 自分のせいで、友達をハラハラさせてしまっている。つまり彼女に対して罪を犯しているともいえる。知らないうちに。

 いろいろ想いの巡った、つい先日のエピソードでした。

‥あー、きづかなくて良かった‥。

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さて、映画の話。


「トランストリップ」
原題 magic magic(2013)

 初めて海外旅行にでたメンヘラ系の女の子、アリシアちゃんが、友達の友達3人と同乗して旅を続けますが、盛り上がると、アリシアには聞き取れないスペイン語を話す他のひとたちに馴染めず、必死にSOSを出すも相手にされず、どんどん精神を病んでいく物語。

 悪人は誰もいない。
ただ、少し意地悪な女と、少し調子乗りな男がいるだけだ。それでも、彼らの悪意ないふるまいが、アリシアを苦しめていく。
ここが恐ろしい。

 やたら綺麗な風景と、心地よい音楽が映画全般に流れているのが観客には救いではあるが、それさえ、なにがあろうとびくともしない自然や、作り上げられた世間の前では、ひとりの人間の苦しみなんて埋もれていくという、人間の無力感の比喩にもとれる。

 人間は孤独に殺される。
そんな怖い映画です。ただグロさやホラーではないから、風景や音楽を楽しみながら観ていられます。

 それにしても暗い映画ですが、
僕は嫌いではないです。

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他人は、自分が見えている風景からは想像もつかない風景を見ていることがある。
時には目線を落とし
時には背伸びして
いかに共有できるかだ。

一応、話がつながった。