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神威杏次 official blog

【俳優・脚本・演出家 カムイキョウジのモノローグ】主に、好きな映画の話に絡めて、神威が意味不明なことを書いているブログ。◆映画の話はネタバレご注意◆

メアリー・トッドが呼んでいる。床に着く時間だ。

 最初から、女の目のまわりには青タンがついていた。

 以後、デイジーのやることなすこと全部がジワジワとツボに入ってきた。

 あ、デイジーとは女の名前だ。

 絞首刑にされるためにレッド・ロックに向かってる女の名前。

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 デイジーと手錠でつながっているのは、彼女にかけられた賞金一万ドルを手にする予定の男「首吊り人」ジョン・ルース。

 ことあるごとにデイジーを殴るんだけど、手錠のせいで常にくっついてるもんだから、妙に仲良い二人に見えてオカシイ。
 差別主義者の保安官クリスの話に仲良くバカ笑いする。なんでお前も笑ってんだよ。以降もシチューをぶっかけられたり、なにか喋るたびに怒鳴られる。山小屋の扉を閉めるのに「釘を打つんだ!」「板は二枚だよ!」となぜか指示を出すところも笑った。なんでお前が偉そうにするんよ。ほぼコント。

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  人種的な蔑称や下衆な下ネタが飛び交う、吹雪で閉ざされた山小屋でクズどもの争いが始まる。タランティーノの真骨頂。

 こんなひどくて救いようのない話がメチャクチャ面白い!ってどういうこっちゃ。

『ヘイトフル・エイト』
原題:THE HATEFUL EIGHT
2015年 アメリカ

監督・脚本:クエンティン・タランティーノ
出演者:サミュエル・L・ジャクソン カート・ラッセル ジェニファー・ジェイソン・リー ティム・ロス マイケル・マドセン 

  あ、オススメしてません。
 普通に見て面白くなくても責任持てませんから。また「わけわかんない」という感想も出るでしょう、そりゃ。

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 舞台になる「ミニーの紳士服飾店」の美術が素晴らしい。担当したのは種田陽平さんという日本人。まるで演劇のセット。

 公開当時、この映画のあらすじを知った何人かの知り合いから「神威さんみたいなホンだね」と言われた。もちろん、タランティーノが神威の真似をするわけもなく、神威が昔からタランティーノ大好きだから設定が似ただけなんだけども。それに、山小屋に閉じ込められた数人の群衆劇なんて設定自体は大昔からある。

 派手にメチャクチャやるから好きなのではない。そこに、今回であれば、南北戦争を絡めた白と黒のいさかい、差別や偏見、人がカネに操られる姿‥それら人間の愚かさを、皮肉満載で描いてくれるから大好きなのです。

 銃も、軽薄な刑事ドラマのように単なるアイテムではなく、人殺しの道具なんだという意識、ましてやタランティーノ脚本だけに、主人公さえ開始5分で撃たれてしまうかも知れないと云う緊張感が常にある。それでも、時系列が戻るからまた登場するんだけど。「パルプ・フィクション」のトラボルタみたいに。

 どうも日本では「バイオレンス」という括りだけで、たとえば北野映画と一緒に語られたりするけど、まったく異質のもの。それどころか、銃を構えて恐そうな顔してるだけのヤ●ザVシネマと一緒にされることさえあるのが個人的には哀しい。

 ちなみに、公式発表のあらすじや予告編は完全に詐称。
けっして「密室ミステリー」などではないし「犯人は誰だ?」なんて話でもありません。行動の動機となる大きな謎はひとつ明かされるけど、謎はそれだけ。と書いてもネタバレにはならない。そんなことが問題の映画ではないです。

 それでもタランティーノ・ファンにとっては脳汁垂れ流し気味に面白い傑作です。あ、お奨めしてません。

 最後に、公式サイトのあらすじと、本当のあらすじを…。

舞台は山の上のロッジ、雪のロッジで足止めを食らい、一夜を共にすることになった人種も境遇もバラバラなワケありの7人の男と1人の女。
 そこで起きる密室殺人。吹雪が作り出す密室で、疑心暗鬼で張り詰めた緊張をほぐすため、また互いを探り合うため、他愛ない会話をかわす面々。やがてそれぞれの素性が明らかになり、偶然ある待ったかに見えた彼らの過去がつながり始めた。わかっていることは8人全員が嘘をついているということだけ!!犯人は? 動機は? 8人の本当の関係とは?
(公式サイトより)

◆本当のあらすじ
(前半ネタバレなし・後半ネタバレあり)

 黒人の賞金稼ぎ・マーキス(サミュエル・L・ジャクソン)は、凍った死体みっつをカネに変えるため、レッドロックという町に向かっていたが吹雪で動けなくなる。そこに通りかかった駅馬車に乗っていたのは、同じく賞金稼ぎで「首吊り人」と呼ばれるジョン・ルース(カート・ラッセル)と、絞首刑にされるべくジョンに護送されている囚人女・デイジー(ジェニファー・ジェイソン・リー)。さらに新任保安官だというクリス(ウォルトン・ゴギンズ)も相乗りとなり、吹雪から一時避難すべく「ミニーの紳士服飾店」に向かう。

 そこでは、店主のミニーの代わりに男数人が留守番をしていた。絞首刑執行人オズワルド(ティム・ロス)元将軍サンディ(ブルース・ダーン)母とクリスマスを過ごしたいカウボーイ・ジョー(マイケル・マドセン)ら。

 南と北、黒と白、一触即発の対立状況がテンコ盛りの中、やがて言い争いから殺しが起きる。さらに、何者かがコーヒーポットに毒を入れ、ジョン・ルースを含む数人が死ぬ。「誰が毒を入れたか」の猜疑心が高まり、争いはさらに激化。

 

===以下、ネタバレ===

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 床の下には、10人目の男・デイジーの弟、ジョディが隠れていた。
実は、オズワルドら4人は弟の仲間で、絞首刑にされるデイジーを救い出すために集まった仲間だった。その素性は、それぞれに賞金がかけられたワルたち。
 ここでジョン・ルースを殺し、姉を助け出す予定で、昼間のうちに店主のミニーたちを皆殺しにして待ち伏せていたのだったが、吹雪のためにマーキスとクリスも一緒に来てしまったことが誤算だった。

 ジョディは床下からマーキーを撃ち、あっという間の銃撃戦で全員が瀕死の傷を負う。

 最後の駆け引きが始まる。デイジーはクリスに「その黒人を撃て。そうすれば全員の賞金が手に入る。私はメキシコに逃げる。」と取引を持ち掛ける。しかし、クリスは取引に応じずデイジーを殺そうとするところで、黒人マーキスが待ったをかける。

 マーキスの提案は「ジョン・ルースは良い奴だった。彼の望みは、この女を絞首刑にすることだった。俺たちの手で叶えてやろう。」ということ。差別主義者だった白人クリスと黒人マーキスが手を組み、悪い女・デイジーを首吊りの刑に処してエンド・ロール。

 

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この結末を「後味悪い」と感じる感性が、きっと僕には欠落している。