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神威杏次 official blog

【俳優・脚本・演出家 カムイキョウジのモノローグ】主に、好きな映画の話に絡めて、神威が意味不明なことを書いているブログ。◆映画の話はネタバレご注意◆

面白くないからだ。

 昔は、みんな悪ぶっていた。
自由な人間に見られたいと頑張った。

 なぜなら、世の中がマトモすぎたからだ。
そこでマトモに生きても面白くなかったからだ。

 今は、みんなマトモぶっている。
堅実な人間に見られたいと頑張っている。

 なぜなら、世の中がムチャだからだ。
そこでムチャに生きても面白くないからだ。

 面白くないからだ。

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 人間の行動原理なんて、昔も今も変わらない。時代が変わった。世代が変わって理解できないなどと言うけど、頑張る方法や使うアイテムが変わっただけで、動機や心理はさほど変わっていない。

 やってることがマトモだろうがムチャだろうが、それも関係ない。そんなものはただの手段でしかない。

 要は「私は生きてる」と知ってもらいたい。
 あるいは「生きている」ことを感じたい。

 かまってちゃんなんだ、

僕も君もオトンもオカンも東京タワーも。

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 18年ほど前、小さな単館上映で観た。ちょうど映画の脚本を持って奔走している頃だった。今となってはセンスも古いオフビートだけども、物語のテーマは普遍的。いつの時代も変わらない、大切なこと。

 多分に僕のノスタルジーを含むひいき目がありますが、この映画を今の若い人が観てどう感じるか、少し興味があるので紹介します。言っちゃうと…

「愛情の欠落によって壊れていた人が愛情を注がれて救われる物語」
 こんなわかりやすく温かい映画はそうそうない。

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『バッファロー'66』
原題:Buffalo '66 1998年 アメリカ

 ※以下、ネタバレありなしとかゴチャゴチャ書いてますが、この映画なら観る前にあらすじを全部読んでもさほど問題はないと思われます。特に驚く展開はないので。


◆最初のほうのあらすじ(ネタバレなし)
 

   ビリー(ヴィンセント・ギャロ)が5年の刑期を終えて出所する。刑務所にいたことは親には内緒だ。実家に電話をし「仕事を終えて帰国した。今は高級ホテルにいる。婚約者もいる」と嘘をつく。

 嘘をついちゃった手前、仕方なしに、たまたま近くに居たレイラ(クリスティーナ・リッチ)を拉致、実家まで連れて行き「いいか、俺の妻のフリをしろ。」と脅す。
 父のジミーも母のジャンも、息子のことなどどうでもよく、父は、若くてかわいいレイラには鼻の下を伸ばしてニコニコと接するのだが、ビリーには笑顔も見せない。気まずい雰囲気をなんとか取り繕ったのはレイラだった。

 

  最初の設定からしてムチャです。親への体裁のために女のコを誘拐しちゃいます。そして、女のコもほぼ抵抗せずについてきて、普通に妻のフリをします。ムチャだけど、このあたりのマジメなのかふざけているのかわからない演出は大好きです。
 四人で座っているテーブルでの会話を、常に一方向からのショット(つまりスリーショット)で撮るカメラワークが面白い。

◆次のあらすじ(ネタバレあり)

 粗暴な童貞男・ビリーの唯一の特技はボウリング。子供のころから通ったボウリング場に行く。ロッカーに貼ってある女性の写真をみて「昔の彼女だ。」というが、実はただ一方的につけまわしていただけの片思いの相手で、その後、ファミレスで本人と出会ってしまい嘘がバレる。
 そんなビリーを、なぜかレイラも好きになる。ふたりきりでモーテルで過ごす。慣れない状況に童貞丸出しでドギマギするビリー。しかし、夜中の2時になると、ビリーはどこかに出かけるという。不安になるレイラ。

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 ボウリングだけがウマいという設定も、恋愛経験ゼロのオタク感を良く表している。ヴィンセント・ギャロは本当にボーリングがうまいのだろう。ボールがぐい~んと曲がるプロ級の腕前。そして子供のようにガッツポーズをする。

 そのガッツポーズを真似ながら、クリスティーナ・リッチのタップダンス・シーンにつながる。このあたりの演劇的な展開がなかなか心地いい。
 
◆結末

 そもそもビリーが刑務所に入ったのは、ノミ屋との賭け試合に負けた埋め合わせに他人の罪を被ることになったため。ビリーは自分が負けたのはチーム・バッファローのキッカーだったスコットが八百長をしたせいだと思い込んでおり、その復讐を密かに誓っていたのだ。
 引退したスコットが経営するストリップ劇場に銃を持って入るビリー。そこでスコットを射殺し、自分も自殺しようと覚悟をしていた。スコットに銃口を向けるビリー。しかし、思いとどまって劇場を後にする。

 ビリーは、レイラのためにココアとドーナツを買い、嬉しそうにモーテルに戻る。抱き合って眠る二人。

 レイラ役は、「ブラック・スネーク・モーン」でセ●クス依存症、「モンスター」でレ●ズの役をやったクリスティーナ・リッチ。訳ありの役はお手の物。めっちゃ柔らかそう。なにが。

 すっかりひねくれた狂暴な男だったビリーが、レイラの存在により、人殺しと自殺を思いとどまり、一転して喜々とした表情でココアとドーナツを購入して帰る。たまたま隣に座っていた男にさえ「君は彼女いる?いるなら、ドーナツをおごってやる。自分で食べちゃダメだぜ。彼女にあげるんだ。」などと楽しそうに話すまでに変わる。

  ビリーに生まれて初めて彼女というものができて気づいたこと。

「何だ、彼女いるとなんか楽しいじゃん。気分がウキウキじゃん。面白いやん。そっか、生きてて面白いなら、じゃ生きてようっと。」というお話。 

いつの時代も変わらない、

 唯一無二の「なにか。」の話。