神威杏次 official blog

【俳優・映画監督・脚本家 カムイキョウジのモノローグ】

ある星の人がやってきた話

 ある星の人が、人類を救うためにやってきました。

 ある星の人は、人類に「生き残るために」ある言語を伝えようとしました。その言語を理解することによって、時間や空間の概念が丸っきり変わるようだ。

 人類が救われるには、現在の概念を変える必要があるらしい。

 例えば、時間の概念が変わる(なくなる)と、どうなるか。未来の記憶と過去の記憶、現在の記憶、すべてが同列に存在するようになる。

 なんの話?…でしょうが…

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 「未来は変えていける」なんて良く言います。いかにも人々が好みそうなメッセージだ。「運命は変えられる」になると、さらにポジティブ感。

 逆に「運命は変えられない」と聞くとネガティブに捉える人もいるかも知れませんが、実は、そっちのほうが、よっぽどポジティブです。

 なぜなら、運命の存在を認めることにより「後悔」という概念が消えるからだ。過去に起こったことはすべて運命であり、仕方のないこと、避けられなかったことと思えば、後悔しようがない。常に、いま現在を起点に、先のことを考えていけばいい。めちゃポジティブ。

 「運命」を大前提として「そこから、どうやって生きるか」を考える。

 うん、過去はそれでいい。

 問題は未来だ。

 「変えることができる」がポジティブに聞こえるのは、そもそも、僕らが自分の未来を知らないからだ。運命を知る由はないのだから、それは「現在から、もっと良くなれるよ」という意味に過ぎず、そりゃ「変えていける」が正解でしょう。但し、それは、運命が変わったということではない。

 そこで、頭の中に、未来の記憶が既にあったらどうなるか。そして、それは、過去同様に「変えられない」が大前提だとしたら。

 まだ独身なのに、これから結婚して子供が生まれることも、早々に夫が他界することも、娘までもが自分より先に…なんて哀しい記憶が、既にあるとしたらどうだろう?
 
 それでも、愛する人と結婚し、子供を作る道を選ぶのか。

 正解は、そうするべきだろう。ポイントは、彼女には「これから生まれてくる娘との楽しい想い出の記憶」がすでにあるということ。それは、娘にとっても楽しい想い出であり、彼女に、娘の人生を奪う権利はない。むしろ、憶を現出させるのが、娘をこの世に送り出すのが彼女の使命と言っていい。きっと、そう感じるはずだ。その後に哀しい記憶が待っているとしても。

 良いことも悪いことも、未来を「思い出」として保有しながら、はてさて、どうやって生きていくべきか。

   ある星の人は、それが「人類を救う方法」だと言っているんだ。

 ふと考えてみれば、

 僕らは「いつか死ぬ」ことを知っているんだ。今でも、すでに未来を知っていながら、現在を生きているじゃないか。

  ある会話。「自分の未来をすべて知っていたら、どうやって生きる?」「今より素直になるな。言うべき想いを伝えるようになるだろう。」

 物事って、考えれば考えるほどシンプルな答えが導き出されるもので。

 そんなわけわからない話も、極力シンプルに考えれば、ある星の人が言いたいことが、少し理解できてくる。
  
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 いやはや、ひさしぶりに壮大なメタファー劇を観ました。

 物凄い映画です。上記、どの映画のネタかは、あえて書かないでおきます。