「幼い頃から、食べるということが嫌いだった。」byヤン
数日前に映画「アリス」を観てから、まるで蟻の巣に引き擦り込まれたような勢いで、長編3本、短編15本くらいを一気に観漁りました。完全にハメられた…
衝撃の映像作家、ヤン・シュヴァンクマイエル。
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CGは使わず、実写のコマ撮り、ストップモーション・アニメといわれる技法を多用。映画のようなアニメのような人形劇のような、不思議な世界観。
作品はすべて「あたまおかしい」です。
だから、うかつに人に薦められません。
こんなのばかりをずーっと観ていたら、きっと本当に頭が変になります。
ただ、僕が強烈に魅かれたのは、冒頭の述懐…すべての作品で、そりゃもう徹底的に「食べる」に喧嘩を売ってます。
「食べる」行為を、おぞましいこと、愚かなこと…と認識しているとしか思えない。いや、食べる瞬間だけじゃなく、「調理をする」「食器に料理を盛る」「食べる」「片付ける」の一連の動作を丸ごとバカにしてます。
食べ物をグチャグチャと食べる口のアップ。スープをズルズルとすする音。「調理用の刃物」「バターナイフ」「鍋」の調理器具や「舌」「歯」などの食に直結する人間の部位が、ことさら強調されデフォルメされて登場する。食べ物にバターやなにかを塗りたくる、スープをかき混ぜる、などの動きが滑稽に描かれる。
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▲長編映画「アリス」(1988)
他作品も観た今となっては、比較的マイルドです。これ。
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そう…「食べる」って変なことなんですよ。
生き物が生き物を食べる、ということ。
食べたほうは一瞬の満足を得て、食べられたほうはこの世から消える。食物連鎖は昔からの地球上の仕組みであり、生きるために、生き物が生き物を食べるのは当然のこと。
そこは宿命、つまりそういうもの。
ただ、理屈や先入観を外して、あらためてその光景を見てみると…、
動物の死骸を切り刻む。
バターナイフで何かを塗りたくる。
口に入れて歯で噛み砕く。
舌で転がして動かす。
飲み物で胃に流し込む。
食べられた者は消えていなくなる。
うん、変なことなんですよ。
おぞましいことなんですよ。
「食べるってことは命を頂いてる。だから、しっかり感謝して食べてるんだ。」なんて言ったところで、殺されて食われる側からしたら、そこで感謝なんてされてもどうなんだろうと。感謝しときゃ食ってもいいのかと。
なんでも都合よく解釈しながら、食べるという行為のおぞましさには見ないフリをしつつ「今日のディナーは××です♪」なんて喜々としているのが人間。
猫や犬を食べたら大変なことになりそうだけど、豚や牛なら平気で食べる。
食べるために働いて、
食べるために生きて、
いろいろ変だってば。
といいつつ、僕は食べることは大好きだし、これからも普通に食べます。
だって食べないと死んじゃうから。
アリスはいいました。
「あ、目をつぶらなきゃ。目をつぶらないと何も見えないじゃん。」