神威杏次 official blog

【俳優・映画監督・脚本家 カムイキョウジのモノローグ】

『ブレードランナー』が描けなかった未来

 先日、BSにて「ブレードランナー」の放送があったので随分ひさしぶりに観た。今さら語るまでもないSF映画の金字塔ですが。

 一昨年は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の30周年で、あれやこれや検証がされてましたね。1985年当時に描かれた2015年について。

 1982年に作られた「ブレードランナー」の設定が2019年。

 ここでもまた、決定的な「あるモノ」が欠けています。

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 インターネットの普及とスマホ。

 これは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」も同じで、ネット社会のここまでの爆発的普及は想像がつかなかったのでしょう。コンピューターはもちろんあって、音声認識などはしっかりと描かれているけど、スマホやタブレットのような薄い端末、画面タップの操作…今では当たり前の光景が一切出てこない。それ以前に携帯電話さえ特別なモノ扱い。ひと昔前のごついモニターで物理ボタンを押しての操作。それも警察など特殊な立場の人たちだけで、一般人にまで普及している様子は皆無。

 それほど想像がつかなかった事だからこそ、世界をひっくり返すほどの大きな流れになったのだろうし、経済界が逆転したのかも知れません。

  車が空を飛ばない。

 バック・トゥ・ザ・フューチャーでもブレードランナーでも、車が空を飛んでます。飛んでません。しばらく飛びそうにありません。

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  禁煙

 意外に大穴がこれ。映画の中では80年代同様に、ほぼすべての人が、男性も女性もぷかぷかタバコを吸っています。タバコというものが今ほど嫌われ者になるとは誰も想像できなかったのか。増してや、電子たばこなんて手塚治虫さんも描いていない。タバコがあんな形になるなんて。

 電子たばこを開発したのがタバコ会社だという点は起死回生で、世界がひっくり返っているとまで感じませんが、誰も想像しなかったという点と、ネット同様に、世の中の大きな流れという意味では同じです。

 

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  人工知能、ロボットの開発は、個人的には悪魔の研究だと思っていますが、なにを嬉々として作ってるんだろうと思いますが、そんなものはSF映画でとっくに描かれている。想像がつくということは対策も出てくるということ。

 もしかしたら、もっと他のこと、今はまったく想像もつかないなにかが、30年後の世界をひっくり返すのかも知れません。30年後…問題の2045年も過ぎてるので、人間そのものがひっくり返ってなきゃいいですが。

 最後に、悪役・ロイの名言を

俺はお前たち人間には信じられない光景を見てきた。オリオン座の近くで炎を上げる戦闘艦。暗黒に沈むタンホイザー・ゲートのそばで瞬くCビーム。そういった記憶も、時と共に消える。雨の中の涙のように。