神威杏次 official blog

【俳優・映画監督・脚本家 カムイキョウジのモノローグ】

怒りの感情が人を幸せにすることはない。

「怒りが君を幸せにしたか?」 

 映画『アメリカン・ヒストリーX』の名セリフです。

 ひとりのバカの身勝手な怒りの感情が、どう転んでも誰も得をしない状況を作り出し、よりによって最悪の結末となった東名道路の事件も、怒りが招いた悲劇。怒りだけの問題でもないようですが…。

 怒りの感情が人を幸せにすることは絶対にない。

 そもそもどうして怒るかというと、自分を否定されたとか、理解してもらえないとか、理解できないとか、言葉が通じないとか、いろいろあるでしょうが、簡単にいうと「価値観の相違」ではないか。

 A君が価値があると信じていることをB君に強く薦めても、B君は反応が薄い。なぜなら、B君はそこに価値を感じてないから。B君が、自分の信じる価値観をわかってくれない。自分を否定された気になりA君は怒る。それは同時に、B君の価値観をA君が理解できないからでもある。B君は、どうしてA君が怒っているかがわからない。A君には、B君がわからないことがわからない。そもそもA君とB君はわかりあえない。価値観が違うから。

 怒りは、お互いにわかりあえない関係の中で芽生えることが多い。

 そもそも「わかりあえる」と思うことが幻想でしかない。

 人間は「他人のことをわからない」

 わからないのは当然のこと。他人は自分ではないから。

 それを「なんでわからないんだ!」となるから、怒る。

 そもそも、それぞれが別の生き物で、増してや男女なんてまったく違う生き物だと云うことを理解していれば、怒る頻度は5分の1くらいに減るはずだ。それでも怒っちゃうんだけども。人間だから。

 言葉に頼ってはいけない。

 僕は「話せばわかる」を信用していません。むしろ、話せば話すほどわからなくなるのが人間同士。増してや、ラインやメールの文字のコミュニケーションで伝わることなんて、ほんのわずかなこと。

 どちらかというと「会えばわかる」が正しい。会って、何も話さなくても眼で伝わることがある。なんなら触れあうことで、体温で伝わることがある。そんな、原始的な、でも確実な、動物同士のコミュニケーションをおろそかにすることから、誤解や悲劇が起こる。

 お互いがわかりあっていく過程で、言葉なんて本当に無力なもの。

 言葉を信用しないことだ。言葉よりも、その言葉を発したときの相手の心をくみ取ることが大事、そこに真実がある。

 
 常に、誰かが誰かに怒っている様子が報道され、処世術という名の「嘘」が当たり前なことになり、それに対して、また誰かが怒っている。

 いつのまに、そんな世の中になったのか。

 
「憎悪はお荷物でしかない。四六時中何かにむかついているには、人生は短すぎる。そんなことに何の価値もない。」
 
 これも『アメリカン・ヒストリーX』