神威杏次 official blog

【俳優・映画監督・脚本家 カムイキョウジのモノローグ】

今そこに無い景色

僕らには見えていない風景があるんだ。

【風景1】でかい人(男)
 でかい人はお酒を飲んで上機嫌で駅に向かって歩いていました。道すがら、誰かとバカ話を続けながら歩いています。楽しかったね♪めでたしめでたし。

【風景2】知らないひと(男)
 知らない人はお酒を飲んでいました。なにか嫌なことがあったのか、少しイライラしています。店を出たときに、店の前の道で、でかい人とぶつかり、カバンを道に落としてしまいました。怒った知らない人は「てめぇ!殺すぞ!」と叫びました。でも、でかい人は素知らぬ顔で去っていきました。

【風景3】でかい人の友達(女)
 彼女は、でかい人の少し後ろを歩いていました。と、狭い歩道脇の店から出てきた知らない人が、でかい人と接触してカバンを落としました。「てめぇ!殺すぞ!」と叫んで、いまにも、でかい人を後ろから殴りそうな勢いです。
さて、知らない人が、でかい人に殴りかかったとしたら、私はどんな動きをすればいいのだろう?と、そのわずか10秒くらいの時間が10分に感じるくらい(本人いわく)地獄の時間を過ごしました。

さて、幸せなのは誰でしょう?

 もし、でかい人が知らない人の怒号にきづいていたら、でかい人はまず間違いなくなにか言い返していたでしょう。場合によっては傷害事件が起こっていたかも知れません。そうでなくとも、みんながもっと嫌な気分になったでしょう。

 知らないことが幸せ、であることは多い。

 普通に暮らしていても、いつどこで誰に恨まれているかわからない?

 自分のせいで、友達をハラハラさせてしまっている。つまり彼女に対して罪を犯しているともいえる。知らないうちに。

 いろいろ想いの巡った、つい先日のエピソードでした。

‥あー、きづかなくて良かった‥。

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他人は、自分が見えている風景からは想像もつかない風景を見ていることがある。
時には目線を落とし
時には背伸びして
いかに共有できるかだ。